Share

第171話 1000万ヴァル

Author: 雨音休
last update publish date: 2026-09-13 06:03:16

 午後一番。

 いま、ラグナシアの町長の家へみんなで向かっていた。晴恋が衣装下着の作成に成功したのである。それを渡しに行くのだ。

 路傍には一列に大きなサボテンが生えている。不思議な形である。トゲトゲとしており、頭にはオレンジ色の花が咲いているものもあった。しげしげと眺めて、ウミは隣にいるアイギスに尋ねる。

「アイちゃん、あの植物、形が変ですぅ」

「本当」

「どうしてトゲがあるのでしょうか?」

「僕にも分からない」

 二人は首をかしげつつ歩を進める。モフモフとした尻尾が仲良く揺れていた。

:サボテンのトゲは外敵から身を守るためですよ。

:ラクダに食べられますけどね。

:トゲの意味ないじゃんw

 アイギスの右手首にはいつの間にか緑色のブレスレットがはまっている。ニキからプレゼントされたらしい。

 午前中、トウマとウミとベルフラウの三人は砂漠を探索し、ボスの出現ポイントを二つ見つけていた。主人の考えでは雑魚よりもボスを

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第171話 1000万ヴァル

     午後一番。 いま、ラグナシアの町長の家へみんなで向かっていた。晴恋が衣装下着の作成に成功したのである。それを渡しに行くのだ。 路傍には一列に大きなサボテンが生えている。不思議な形である。トゲトゲとしており、頭にはオレンジ色の花が咲いているものもあった。しげしげと眺めて、ウミは隣にいるアイギスに尋ねる。「アイちゃん、あの植物、形が変ですぅ」「本当」「どうしてトゲがあるのでしょうか?」「僕にも分からない」 二人は首をかしげつつ歩を進める。モフモフとした尻尾が仲良く揺れていた。:サボテンのトゲは外敵から身を守るためですよ。:ラクダに食べられますけどね。:トゲの意味ないじゃんw アイギスの右手首にはいつの間にか緑色のブレスレットがはまっている。ニキからプレゼントされたらしい。 午前中、トウマとウミとベルフラウの三人は砂漠を探索し、ボスの出現ポイントを二つ見つけていた。主人の考えでは雑魚よりもボスを倒した方が、効率が良いらしい。何ともトウマらしい考え方だと思った。 朧月とトワのペアに勝つためにも、高得点をたたき出さなければいけない。 町長の家はオアシスの隣だった。レンガ造りの大豪邸である。普通の民家を三軒並べたほどの大きさだった。庭にはナツメヤシ以外にも木々が植えられていた。オアシスから水が流れてきており、ため池を作っている。これなら家にいても水に困らない。すぐ近くには畑もあった。 地図を片手に先頭を歩いていたベルフラウが「ここね」と言って玄関へと案内する。みんながその背中に続いた。ベルフラウと晴恋が並び、赤茶けた扉をノックする。すぐに中から返事があった。扉が開き、木製の杖をついたティオが顔を見せる。「あら、貴方たち、衣装はもう出来たのかい?」「はい。何とか出来ました」 晴恋が答えて、ステータス画面から五枚のスキンカードを差し出す。金色の綺麗なカードだ。 ティオは受け取って、にんまりと口の端をつり上げた。「おお、ありがとう! 確かにAランクだね。こりゃあ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第170話 恋わずらい

     晴恋は歌っていた。 宿屋の一室に美しい歌声が響き渡る。隣室からの壁ドンは今のところない。 晴恋【裁縫評価B】『セクシーバレンタインのスキンカード』を獲得 彼女は一生懸命歌うのだが、何度試しても作成されるのはセクシーバレンタインである。Aランクは出来ない。(……何が悪いんだろう) 大体、曲が悪いのだ。曲名『恋わずらい』。セクシーな曲調であり、アップダウンが激しい。そして歌詞は少し下品だ。全然好みの歌じゃなかった。せめてもっと普通のロックだったならと思ってしまう。 自分は歌のプロではない。どこかで習ったこともなかった。だけどカラオケの採点基準は知っている。ビブラート、ロングトーン、しゃくり、こぶし、それらを上手に行うことで点数が加算されるはずである。言うは容易いが実践は難しい。素人が一日でできるようになるものではなかった。 はあ……。(これは私には無理ですね) とは思いつつも、晴恋は再びお手本をタップする。目をつむった。あごでリズムを刻みながら静かに聴いた。全てコピーできるように、歌声を細かく記憶していく。 一方その頃。 ニキとキャルル丸、アイギスは一緒に町の外へ出ていた。 モンスター討伐競争の練習をするため、チームごとに分かれて狩りの練習である。 だだっぴろい砂漠の砂地だった。遠くには三角形をした砂丘が見える。太陽の光を砂地がじりじりと照り返していた。ソフトクリームの効果で暑さを感じない。乾燥した風が吹いており、ニキのソフトモヒカンがさわさわと揺れる。キャルル丸が砂地をのしのしと踏みしめていた。 辺りにはジェノスという小さな恐竜モンスターがたくさん歩いていた。身体は青く、獰猛な牙を生やしている。 ニキとアイギスの間に会話はない。これまで、たわいのない話をしたことは一度もない。少し気まずかった。(この時を待っていたさ!) ニキはキャルル丸から飛び降りて、アイギスを振り返る。「アイ、ここで狩りを

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第169話 その唇、いただきんすよ?

     晴恋は頭を抱えていた。 これからセクシーな下着を作らなければいけない。 オアシスの前の砂地だった。家族で水浴びをする町民も現われており、下着姿で水に浸かっている光景がある。水面から肩を出して朗らかに会話をしている。子供たちの顔には清々しい笑顔が浮かんでいた。水際ではラクダがのんびりとした顔つきで伏せっている。子供が「グーちゃんも入ればいいのに」と声を上げた。どうやらあのラクダの名前はグーちゃんのようだ。 ラグナシアの町長、ティオが晴恋に衣装のデザインパターンを渡す。それは一枚の羊皮紙だった。ステータス画面に入れると裁縫の項目に『衣装下着』が追加される。他にも、裁縫をするための素材を受け取った。念のため30着ぶんの素材をもらうことにした。低評価が出た場合、変な衣装下着が作成される恐れがあるからだ。 ティオはにんまりと笑みを浮かべて話した。「晴恋さんっていうのかい。貴方、衣装下着のランクはAでお願いするね」「え、Aですか? それはちょっと難しいかもしれないです!」「そこを何とか頼めるかい? もしも裁縫に失敗したら、素材はいくらでもあげるからね。何とか頼むよ」「そ、そんなこと言われましてもぉぉ」 両手で口元を押さえて嘆息する。 ティオは「お願いしたよ」と言って晴恋の肩をぽんと叩いた。トウマに一礼をして去っていく。五人のダンサーたちもその背中に続いた。「ふわあうぅぅぅぅ」 晴恋は涙目になってしゃがみ込む。:裁縫って難しいの?:カラオケのミニゲームじゃん?:A評価の衣装下着って、めちゃくちゃ防御力が高いんじゃ? ベルフラウが隣に来て、晴恋の背中を優しく撫でた。「晴恋、頑張るしかないわ」「晴恋さん、頑張りましょう」「晴恋、頑張る」 ウミとアイギスも拳を握って応援してくれている。他のみんなも次々に激励の言葉をかけてくれた。 人の気も知らずにトウマが口を開く。「晴恋。とりあえず、歌ってみたらどうだ?」「だんちょー

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第168話 晴恋さん、頑張れ!

     朝はみんなでバフ料理を食べるのが日課だった。 ラグナシアのオアシスの前。青々とした広い水面をナツメヤシの木々がぐるっと囲んでいる。水を汲みに来た子供が頭に壺を載せている姿があった。一方ではラクダががぶがぶと水を飲んでいる。口をもごもごと動かしており、嬉しそうに目を細めている。ラクダが小さな車を引いている光景もあった。車の荷台にはタルが積まれている。飼い主のおじいさんがオアシスからタルに水を汲んでいた。 晴恋たちは暑い暑いとつぶやきながらカレーライスを食べていた。満腹度を回復させるためには食べなければいけない。ベルフラウの作ってくれるカレーライスはジューシーなカツが載っかっており、カレーには濃厚なコクがある。スパイスもよく利いている。大変美味いのだが、熱すぎだった。どうしてかアイギスは二杯目を食べている。この使い魔はかなりの食いしん坊だ。:この気温でカレーライスはきつそう。:アイちゃんは余裕みたいだね。:キャルル丸も食うのが早いぞw 晴恋の隣に座っているニキがつぶやいた。「こりゃあ汗が噴き出るさ」「ニキさん、頑張って食べましょう。ソフトクリームが待っていますよ?」 そうは言うものの、晴恋は半分食べ終えた時点でもうお腹いっぱいだった。それでも残すのはベルフラウに悪い。頑張ってお腹に詰め込んでいく。「晴恋、全部食べられるかい?」「……ちょっとキツいです」「残り、食べてやろうか?」「あ、お願いしても良いですか?」「任せろって!」 ニキが自分のカレーライスをガツガツと食べる。完食すると食器はすぐに消えた。そして今度は晴恋のカレーライスを受け取り、もりもりと食べる。(助かりましたぁ) さすがにもう食べられない。「みんな、これ、ソフトクリームだから」 ベルフラウが製菓カードを配ってくれる。一人五枚ずつあった。効果時間は2時間なので、これだけあれば今日一日は持つ。 晴恋は微笑を浮かべて受け取った。「ありがとう、ベルち

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第167話 これが、恋ってやつか

     その夜。 ラグナシアの魔導具店にニキはいた。 直方体のこぢんまりとした建物だった。レンガ敷きの床は日焼けしたような小麦色である。外は冷え込んでおり、室内の暖炉では薪が赤々と燃えていた。木製の棚の上には厚手の白い布が敷かれており、その上に様々な魔導具が並べられていた。フロアスタンドが三つ置いてあり、店内をほのかに照らしていた。ニキの他にもカップルのプレイヤーが一組いて、「これいいんじゃない?」と声をかけ合いながら品物を物色している。二人とも、オシャレなマフラーを巻いていた。 ニキの格好もチェンジしている。砂漠の夜は、裸にチョッキではさすがに寒い。トウマたちが宿屋に行くのを見届けた後、みんなで防寒具を作ったのだった。ラグナシアの近辺に生息する服の素材モンスターを狩り、服屋で作成した。いま黒のダウンジャケットを着ている。 魔導具店に来ている理由は他でもない。プレゼントを買うためである。 ニキは難しい顔をしてつぶやいた。「アイには、何をあげたら喜ぶさ……?」 プレゼントの相手は晴恋ではなかった。アイギスである。 出会った当初から関係があまり上手くいっていない。 ニキは気にしていた。 恋人の使い魔ともっと仲良くしたかった。(そんなことをする必要は無いさ?) そうとも思う。 だが彼は不器用な性格である。 アイギスとも一緒に笑い合いたかった。 そんな訳でプレゼントをする魔導具を選んでいる。ヴァルはたくさんあった。けれど、高価過ぎるものをプレゼントしても相手が気負ってしまう。 ふと厚手の布の上に、鳥の模様が施された緑色のブレスレットが置いてあった。ウイングブレスレットである。ニキが手首につけているものと同じものだ。お値段は二万ヴァル。 そうだ。(これにするさ!) お揃いでつければ、仲良くなれると思った。 だけど果たして、アイギスは自分とお揃いのブレスレットをつけてくれるだろうか? 未知数である。 ニキ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第166話 あと一回だけ

     銀座コリドー街のビルの八階だった。 アクナとマナトは二人で食事に来ていた。 窓から夜景が見渡せるフレンチレストラン。店内はほどほどに混んでいる。客は誰もが同伴者をつれていて、一人で食べに来ている者はいなかった。四角いテーブルを挟んでブラウンの長いソファが設置されている。一席一席が広々としていた。何とも豪華な造りである。壁で区切られている厨房には窓があり、調理風景を眺めることができた。壮年の男性たちが真剣な顔つきで調理している。肉にソースをかける手つき一つさえ熟達しているように映った。濃紺の服を着たウェイターたちが料理の皿を運んでいた。ウェイターたちの顔つきは調理師たちよりも若い。ここで修行を積んでいるのかもしれなかった。 ふと、窓際の席に座っているスーツ姿の男性が、同伴者の女性に対し、開いた宝石箱を差し出した。「僕と結婚してくれないか」とプロポーズしている。女性は服の袖で目をぬぐいながら「はい」と答えた。周りにいた他の客たちが振り向いている。室内に小さな拍手が起こった。 目の前にいるマナトの眉が不機嫌そうに跳ねる。 牛肉の赤ワイン煮込みをナイフとフォークで切り分けて、アクナは口に運んだ。その後で赤ワインを口に含む。上品であり濃厚な味わいが喉を通り抜ける。思わず口角が上がった。(うむ、美味よのう)「それで、マナト、頼みとは何じゃ?」「それなんですが……」 久しぶりに姉弟二人で食事に来ていた。理由は他でもない。父親の鬼助が脳梗塞で倒れ、危篤に近い状態が続いているからだった。医者が言うには、来月には死んでもおかしくないらしい。息を引き取れば葬式が必要だ。その段取りについて話し合っていた。話し合いの末、家族葬にすることで決まった。費用は父親の生命保険から払う。生命保険の余った金は全て弟にくれてやることにした。 マナトは目に涙を浮かべて話した。「姉さん、グラスオースのことは前に話しましたよね」「ああ。父さんのギルドと喧嘩になったギルドがグラスオース、だったのう。今日、たまたま会ったわい」「……トウマに、会った

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第2話 ログネスト

     ログネストの玄関は広い空間になっている。背の高い天井。タイル敷きの綺麗な床。 しかし、空気は息苦しいほど重かった。 今も、通路からドリンクを汲みに来た利用客がある。ちらりと振り返ると、寝ていないような疲れた顔をしていた。 ふと隣には男性店員に連れられた太り気味の客がやってきた。太り気味の客は男性店員に頭を下げて大声を出す。 「待ってください! あと五時間、五時間プレイできれば、ヴァルを払えそうなんです!」「お客様、すでに退室の時間でございます」 (……ヴァル?) 背中に鳥肌が立つのを感じながらユウマはカウンターに向き直る。 茶色い受付台を挟んで、ユウマの前には女性店員が立って

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第1話 詰み

     それは、どこにでもある小さな“シアワセ”だった。 朝。寝息を立てているユウマの肩に、妻が優しく手を置く。 「ユウマ、起きて起きて」「むにゃむにゃ、もっと寝てたい」「駄目。会社に行く時間よ」「ぐぐー、ん、朝?」  瞳を開く。目の前には妻の優しい笑顔があった。ユウマはダブルベッドから上半身を起こし、右手を口元に掲げて大あくびをする。 「ふわあ」「あら、大きなあくびですこと」「朝食は?」「出来ています。着替えて、ダイニングへ来てくださいな」「ああ、分かった」  クスッと笑って妻が部屋を出て行く。スリッパの足音が遠ざかって行った。 ユウマはベッドから出て支度をする。ワイシャ

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第47話 それぞれの準備

     ――ヒイラギがノーファン村の領主に任命された その一文は、ログインをしているプレイヤー全員の頭上に表示されたのだった。 ノーファン村のヤマネコ食堂。そこでは小さな宴会が行われていた。 直方体の木造りの室内。木製のテーブルが規則的に並んでいる。古めかしい定食屋といった雰囲気であり、テーブルの上には様々な料理と酒瓶が並んでいる。焼き肉、油淋鶏、鳥の軟骨の串焼き、レバニラ、揚げ豆腐、ウインナー、山盛りフライドポテト、サラダ、他にもたくさん。 壁の掛け時計を見てウミは眉尻を下げた。いま午前八時前。悲しみの吐息をつく。 これから、どうなるのですか? 今頃トウマは、何をしているでしょうか。

  • RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~   第3話 排除

    ロッジのような一室。木造りの天井と丸太で出来た壁。そこのベッドにユウマは腰掛けていた。 ここがゲームの中らしい。 顔の前にはステータス画面のような半透明の青いボードが浮かんでいる。 システム音声が響いた。 「プレイヤー様。VALORIUMオンラインの世界へようこそ!」 「あ、はい」 「まず、プレイヤー名を決めてください」 「トウマで頼む」 彼の本名は冬野悠馬である。 「トウマ、その名前は使用できます」 「良かった」 「次にゲーム内職業を選んでください」 画面には様々な種類のジョブが並んだ。 そして右上には特別コード入力の文字。そこをタップして、暗記し

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status